主役 (51)

主役 (51)

今回は、本来、主役でないものが主役になるという話である。 自分が少しだけ滞在した大学の、引退された先生の話である。彼は若い頃、植物ホルモンのオーキシンの研究をしていた。当時はまだ純度の高い標品を安価に手に入れることができず、自分で精製していたそうで、そのやり方が豪快であった。 オーキシンは、主に茎の先端部など、植物の成長著しい部分で生産されるが、彼は、タケノコの缶詰工場に行き、大量の煮汁をもらってきて、そこから件の物質を精製していたのである。普通なら成長の良い植物を集めて、植物体から抽出、精製となりそうであるが(現在なら、化学合成物ということであろうか)、煮汁という本来脇役にもならぬものが、主…